十数年ぶりの刊行

そろそろ、伏線の回収というか、前振りの後付けをしておきたい。

結論から言うと、パズラボ帖の最新刊が出たのだ。前号の『パズラボ帖5』が2011年に出てから、十年ちょっと経ったことになる。

http://kofth.com/projects/pzlbc/

前号は「ふしぎもの」と名付け、パズルの世界では周辺分野のように扱われてきた品々に注目したのだけれど、今回の特集は「グラスパズル」という王道のシリーズ。ある時期に界隈をにぎわせただけあって、けっこう話題も多い。

残念ながら、グラスパズルそのものは終了しているので、これから新作が出ることはないし、もし今から出たとしても、当時のラインナップと同等に捉えられることはないだろう。ただ、シリーズとしては止まっているからこそ、これまでの状況を整理しやすいし、また整理する意義もある。

この特集については、本当に話題が色々あって、それこそ、完成までに十年近く経った事情さえもエピソードの一つと言えそうだ。そのあたり、つらつら書くとキリがないから、ひとまずポッドキャスト「パズルの話半分」で話そうと思っている。

そんなことより、今すぐ手に入れて読みたい、という熱意ある人(とても良いお客さん)は、下記のリンク先に進むと良いかもしれない。

https://shop.puzzlab.com/?pid=171628739

ところで、以前の記事に書いた「定番」というのは、本件のことだった。この冊子を定番と言うには発行まで長すぎるが、それだけ手間のかかるものだし、いくらか引っ張る方が説得力も増すのではないか。そう達観しておこう。

話半分のはなし

話半分を始めた。誤記ではない。ここは「話半分に」ではなく、「話半分を」なのだ。

もし、始め方までテキトーだったら「話半分に話半分を始めた」なんて奇をてらうこともできたのだけど、それは余談が過ぎるので、そっちには進まない。閑話休題。

さっさと結論を言えば、話半分という名のコンテンツを始めたのである。正確には「パズルの話半分」というポッドキャスト。言わば、インターネットラジオみたいなものだ。

パズルの話半分

Spotify

いまだに、パズルって何だか分からない。そういう、よく分からない、大きな海みたいな広がりを雲の上から眺めるようなスタンスで、ときに降下して魚群を見たり、ときに上昇して潮の流れを見たりする。それを音だけでやろうというのだ。いくらでも動画が作れる時代に奇特な話ではあるが、始めてしまったものは仕方がない。

ちなみに、これを書いている時点では合計で3回ほど公開されていて(第0回なんてのがあるからカウントがややこしい)、手元には同じだけの収録分がある。つまり、このストックを順に解き放つわけで、基本的にリアルタイムの配信ではないから、どうしてもタイムラグというものが発生する。しかし、話している人間たちに収録後の出来事は関係ない。

そうなると、タイムリーな話題は期待しない方が良いのだが、そもそもパズルは時期を選ばないものじゃないですか。違うかな。いずれにしても、話半分だから気にしないでいこう。

なお、前回の記事で「例外」とボカして書いたけれど、これは本件のことを指している。まあ、気軽に楽しんでください。

いつもの編集、べつもの編集

ここに来て、定番と例外に追われている。より正確に言えば、十年ほど前に始まった(はずの)プロジェクトと、その再開をきっかけに誕生したプロジェクトだ。

古い方の案件は下準備を進めていたものの、制作サイドの諸事情があって長らく休止状態。ところが、昨今の情勢でオンライン会議が増え、かえって遠方どうしの距離が縮まった結果、このプロジェクトも打ち合わせから再開しようという話になった。

ネット上での打ち合わせは、この感染症禍が広がる前から個人的に多用している。他県のメンバーで事を進めることも多いから、いちいち長距離移動で顔を合わせるわけにはいかないし、そのための時間と費用も無視できない。今や珍しい話でもないでしょう?

そんな慣れもあって、あの古くからの案件に、少なくとも会議スタイルの上では新しい形を盛り込むことになった。いざ、その重いフタを持ち上げてみると、意外とすんなり滑り出せる。先は明るい。あとは動くだけだ。と、そのための準備作業が冒頭の「定番」なのだ。

で、もう一方の「例外」は何かといえば、これについては述べようがない。まったくもって「定番」とは異なる形式だから……というより、作ったことがないものなので、作り方から作ってきた。

とはいえ、どちらも編集という言葉を使える対象ではある。「定番」の方は、いつもの編集だなと思えるし、まだ別物という印象の「例外」にも、まあ編集だなと感じることが多い。素材そのままを味わってもらうことができそうにないのだから、これは仕方ないか。

さて、あとは披露するタイミングを決める必要がある。おそらく「例外」の方が先になるのではないかな。慌ただしいのは今に始まったことではないし、こうして同じ時期にもがいていたのを後で笑えるくらいになればいいなと思うばかりだ。

2021年の頭に、2020年を振り返りつつ。

もはや、ほとんど「パズいち」の連絡板となっていた、このページ。

ところが、イベント自体が無期限の休止に決まった途端、すっかり更新が途絶えてしまいました。それは当然の結果であって、仕方ない。しかし、元来は雑記帳のようなページなのだから、本来の意義を取り戻し、雑文を書き並べるべきではないか。

そういった声が各方面から届いた――という話は一切ないので、ここは自ら書き散らすしかなく、ひとまず手短に2020年を一年を振り返ってみます。

そうは言っても、ただでさえ2020年は話題の豊富な年でした。語りだすとキリがなく、たいした結論も出ない上に、これを読んでいる方が世間的な情報を期待しているとも思えない。そんなわけで、さらりと自分の活動を切り取ることにしましょう。

・「Platrin」の新版を制作
・「Cardiamond」を制作
パズいちが偶数月の開催に
ぷりぷれパズルに「ヒツジとオオカミ」「六枚の葉っぱ」「スノーマンの箱」を提供
パズいちが無期限の休止に
・葉樹林から「Dualone」が出る
・「White Leaves re-mix」を制作
・「4U Plus」の特別版を数セットだけ制作

それにしても、平面的なコンテツが多いですね。これは制作環境の事情、または本人の能力によります。もちろん、ここにTwitterで述べたパズル的なツイートは含めておらず、それを含めると少し厚みは出ますが、なにぶん雑なので割愛しました。

さて、上記のうち「4U Plus」だけにリンクが含まれていないことにお気づきでしょうか。率直に言えば、妥当なリンク先がないんだから仕方ないじゃないの、という話なんですが、理由は他にもあります。それは、これから制作するものに関係があって、これから作るんだから存在しない。ないものはない、となって話が循環してしまった。

すとんと言ってしまえば、特別版(上掲のものがコレ)を作った後に、いわゆる「通常版」を出そうとしているのです。そもそもの紹介ページは通常版のために用意するべきで、その注記として特別版を紹介したい。そんな筋書きがあって、結局のところ、リリースの順序が逆転しまったのでした。

ともあれ、この先で何が起こるか誰も分かりませんが、色々やってみるスタンスは変わりなく進んでいきます。そういえば、例によって新年の図案を更新しました。ページの最下段が最新です。

2021年も、よろしくお願いいたします。

ゲームのクイズで思い出す

このページへの投稿も、すっかりごぶさたしていますが、先日こんなツイートをしました。

我ながら、分かるようで要領を得ない、思わせぶりな書き方ですけれど、この『Board Game Quiz』を知ったとき、すっと思い出したものがあったのです。
それが「パズルのクイズ」という二十数年前の記事。

当時、パズル懇話会の機関紙に掲載され、残念ながら内容は公表できないのですが、形式的にはパズル全般についての知識をテストしてみよう、という趣旨の記事でした。
それを書いたのは、作家として、コレクターとして、プロデューサーとして、パズルの界隈を牽引していた芦ヶ原伸之さん。

彼の著作を読んだことがあれば、その語り口には独特の癖があることをご存じでしょうが、その出題そのもの(マルバツ方式の100問)は実にスタンダードな内容ばかり。
もちろん、その前口上と解説には、いつものNOB節が染み出していて、これはこれで読みどころがありました(紹介できないのが、もどかしい!)。

そんな記憶が飛び出してきたものだから、頭の中では「パズルのクイズ」を思い出しつつ、「ゲームのクイズ」も面白そうだぞ、と感じていたのです。
と同時に、もし今「パズルのクイズ」を作るとしたら、どんな出題が考えられるか、そんな思いも少々ありました。

結局はゲームマーケットへの参加があって、新作の準備で慌しいうちに自然消滅したのですが、この際やってみようと思います。

少々マニアックなのは承知の上で、自分なりに作ってみたのが、次の問題。
すべてマルバツ方式です。さっそく、どうぞ。

【問題】
 1. ペントミノは裏返しによる区別が発生する最小のポリオミノだ。
 2. マーティン・ガードナーは楊枝を使うパズルを著作で取り上げた。
 3. 目付絵とは逆さ絵の一種だ。
 4. 素数だけしか使わない方陣が存在する。
 5. SBPとは内部空間のある組木の総称だ。
 6. 「リングキャッチャー」には輪ゴムが付いている。
 7. 「Burr Tools」は知恵の輪の難易度を比較するプログラムだ。
 8. 『The メカニカルパズル 130』には折り紙パズルが登場する。
 9. パズルの二大分類のうち、スローカム分類には「その他」の項目がない。
 10. 芦ヶ原伸之によるパズルコレクションの一部はNOBギャラリーが管理している。

まぁ、無理を承知で出題したものもあるのですが、いかがでしたか?
それでは、答え合わせです。

【解答】
 1. ×:裏返しの区別は4単位から発生する。ペントミノは5単位。
 2. ○:TantalizingToothpick TeasersがPerplexing Puzzles and Tantalizing Teasersにある。
 3. ×:逆さ絵とは直接に関係なく、一種の当てもの。
 4. ○:素数方陣は数多く発表されている。
 5. ×:Sliding Block Puzzleの略。いわゆるスライディング・パズルのこと。
 6. ×:金属製のリングとチェーンのみ。
 7. ×:組木を解析する目的で作られたもの。知恵の輪の難易度を比較する機能はない。
 8. ○:66ページを参照。
 9. ○:Hordern-Dalgety分類には「その他のタイプ」がある。
 10. ×:正しい名称は「JAISTギャラリー」のはず。

本家の出題にはかないませんが、自分の知らない分野への橋渡しになるような、そんな気付きになったら面白いかなと思います。