ゲームのクイズで思い出す

このページへの投稿も、すっかりごぶさたしていますが、先日こんなツイートをしました。

我ながら、分かるようで要領を得ない、思わせぶりな書き方ですけれど、この『Board Game Quiz』を知ったとき、すっと思い出したものがあったのです。
それが「パズルのクイズ」という二十数年前の記事。

当時、パズル懇話会の機関紙に掲載され、残念ながら内容は公表できないのですが、形式的にはパズル全般についての知識をテストしてみよう、という趣旨の記事でした。
それを書いたのは、作家として、コレクターとして、プロデューサーとして、パズルの界隈を牽引していた芦ヶ原伸之さん。

彼の著作を読んだことがあれば、その語り口には独特の癖があることをご存じでしょうが、その出題そのもの(マルバツ方式の100問)は実にスタンダードな内容ばかり。
もちろん、その前口上と解説には、いつものNOB節が染み出していて、これはこれで読みどころがありました(紹介できないのが、もどかしい!)。

そんな記憶が飛び出してきたものだから、頭の中では「パズルのクイズ」を思い出しつつ、「ゲームのクイズ」も面白そうだぞ、と感じていたのです。
と同時に、もし今「パズルのクイズ」を作るとしたら、どんな出題が考えられるか、そんな思いも少々ありました。

結局はゲームマーケットへの参加があって、新作の準備で慌しいうちに自然消滅したのですが、この際やってみようと思います。

少々マニアックなのは承知の上で、自分なりに作ってみたのが、次の問題。
すべてマルバツ方式です。さっそく、どうぞ。

【問題】
 1. ペントミノは裏返しによる区別が発生する最小のポリオミノだ。
 2. マーティン・ガードナーは楊枝を使うパズルを著作で取り上げた。
 3. 目付絵とは逆さ絵の一種だ。
 4. 素数だけしか使わない方陣が存在する。
 5. SBPとは内部空間のある組木の総称だ。
 6. 「リングキャッチャー」には輪ゴムが付いている。
 7. 「Burr Tools」は知恵の輪の難易度を比較するプログラムだ。
 8. 『The メカニカルパズル 130』には折り紙パズルが登場する。
 9. パズルの二大分類のうち、スローカム分類には「その他」の項目がない。
 10. 芦ヶ原伸之によるパズルコレクションの一部はNOBギャラリーが管理している。

まぁ、無理を承知で出題したものもあるのですが、いかがでしたか?
それでは、答え合わせです。

【解答】
 1. ×:裏返しの区別は4単位から発生する。ペントミノは5単位。
 2. ○:TantalizingToothpick TeasersがPerplexing Puzzles and Tantalizing Teasersにある。
 3. ×:逆さ絵とは直接に関係なく、一種の当てもの。
 4. ○:素数方陣は数多く発表されている。
 5. ×:Sliding Block Puzzleの略。いわゆるスライディング・パズルのこと。
 6. ×:金属製のリングとチェーンのみ。
 7. ×:組木を解析する目的で作られたもの。知恵の輪の難易度を比較する機能はない。
 8. ○:66ページを参照。
 9. ○:Hordern-Dalgety分類には「その他のタイプ」がある。
 10. ×:正しい名称は「JAISTギャラリー」のはず。

本家の出題にはかないませんが、自分の知らない分野への橋渡しになるような、そんな気付きになったら面白いかなと思います。

2017年のはじまりに

吸い込む空気が急に冷たくなったと思ったら、さっぱり年が明けました。
あけまして、おめでとうございます。

昨年は元日からTwitterを始めて、すっかりアウトプットが向こうへ行ったきり。
そのせいで、こちらのページは閑散として、かえって今は書きやすくなった気すらします。

かといって、かっこいい抱負など持ち合わせていませんが、
これまでに考えてきたモノやアイデアを整理して、
ものによっては実際に制作できればいいなと思っています。

ところで、今日は新年の図案を掲載して、一緒に「Macaroni」のページも用意しました。
以前のサイト以来の紹介で、およそ十数年ぶり。

これにはワケがあって、昨秋だったか、海外のパズル家さんから問い合わせがあり、
ある組木の一部に利用(?)されたのでした。
ところが、その記事は非公開情報だそうなので、ご紹介できないのが惜しいところ。

そういうわけで、今年もよろしくお願いします。

根っこの芽

やはり、それなりに間が空いてしまいました。

昨年の秋から続いている「文字しごと」に追われているのですが、
その着地まで、あと少し。
それで、少しずつ自分の書きものに頭が向き始めています。

そういえば、前回「インプットやアウトプットを変えて」と書いたあと、
ほどなくしてTwitterを始めてみました。
何の役に立つのか分からない、ちょっとしたことを書き連ねていますが、
たまに「パズルの根っこ論」の芽みたいな思い付きも入っています。

きちんと整理するには、もうちょっと時間が必要かな、という感じです。
サイトの剪定も、少しずつ進めています。

2016年の始まりに

あけまして、おめでとうございます。

前回の日付からすると、けっこう長い空白でした。

このページから離れていたのには、わりと明確な理由があって、
それは消化しきれないほど、身の周りに文字があふれていたからでした。

たしか、冬が終わって暖かくなってくる少し前だったか、
これからは文字に絡む作業が多くなりそうだという感じがあって、
それは面白そうだけど、偏りすぎもいけないなと思っていたのです。

昨年の夏、縁あって『数学マジック事典 改訂版』の刊行に関わり、
それとは別に、今度は図案としての文字にも対面することが重なりました。
それで、ちょっと文字に対して食傷気味になることもあったんです。

でも、いったん慣れてくるとワガママなもので、
むしろ文字に絡んだことをやりたくなってしまいます。
ところが、今度は時間がないから、
アイデアばかりの頭でっかちになってしまったりする。

そういうわけで、この年の変わり目に、
わざとインプットやアウトプットを変えてみて、
自分の思考をリフレッシュさせようかなと思っています。
こうして書き連ねているのも、そのひとつ。

そうそう、このタイミングでプロジェクトのページを少し整理しました。
懐かしいものも、新しいものもあります。

それでは、本年もよろしくお願いいたします。

根っこの前に

たしか十年くらい前に、「パズルってシャヘイだね」と言われたことがあります。
しゃへい?
漢字だと「遮蔽」なんて書く、あのシャヘイです。
そう言ったのはパズルとは無縁の人で、それでも職業がら、物事の観察には長けた人物。

その方の話だと、パズルってのは結局のところシャヘイだと、そう言うわけです。
実は、私の記憶もあいまいで、あまり話の前後もはっきりしないのですが、
自分の作ったものを見せたら、そんな発言が出てきたように記憶しています。

つい最近、とある案件で、パズルの資料を大量に調べる必要がありました。
まるで、パズル史の長編映画を一度に見てしまったような、
かなりの情報過多におちいったときのことです。

不意に、あぁパズルの全体に「隠す」とか「隠れている」とか、
そういう状況があふれているな、と思えたのです。
大発見をしたとか、そういうことではなくて、なんとなく。
これが、シャヘイということかと。

もちろん、「隠すこと」はパズルに限らないのだけれど、
ただ、少なくともパズルにとっては外せない要素の一つでしょう。

パズルの問題だったり、パズル的なおもちゃを作る人たちにとって、
どんなことを見つけてもらうか、それをどこまで見せておいて、
何を、どうやって隠すのかは、とても大事なポイントです。

ゴールを隠さずに見せて、そこに挑ませる面白さもあれば、
あえて隠すことで面白くなったものもある。
その隠し方なり、隠したこと自体を楽しむわけで、
そういう変化を時代に沿って追えば、パズル史になるのかもしれない。

その一方で、パズルを楽しんで、面白さを伝える人たちもいます。
どこまで隠さずに言ってしまうか、どこまで見せてしまうか、
写真を撮るときは工夫しないと、なんて考えたりしますね。

情報を得る側にとっては厄介なのかもしれないけれど、
そういう秘密派と公開派みたいなスタンスの違いも、
これまたパズル界隈の面白い現象だったりするわけです。
ここにも、向きの違ったシャヘイがあります。

そんなことを、だらりと考えていたら、
そろそろパズルの根っこについて考えてみても、
何か得るものがあるかもしれないな、と思いました。

「パズルを考える」のではなくて、「パズルについて」を考える。
それで、「パズルの根っこ論」なんてカテゴリーを作ってみました。